卸売市場法改正、業務規程見直しにあたっての見解と方針

            平成31128  仙台市中央卸売市場水産物卸協同組合 

1.業務規程見直しにあたり、改正法の孕む重大問題を指摘する

「改正法」は、その文面で「委託・せり」という市場の「取引原則」のほぼ全てを廃止し、一方では明言を伏せて、仲卸業者の場内営業の法的な根拠である「仲卸必置原則」の実質廃止を行っています。

「仲卸必置原則」の「必置」とは、卸売市場法制の独特な用語ですが、公正・公平・公開を旨とする卸売市場制度による流通は、集荷は委託で行い、価格形成と流通は、仲卸業者達の(※1)互いの「せり合い」によって決め、彼らに委ねられるという「委託・せり原則」が柱になっています。

この柱を中心として、様々なルール=「規制」が為されています。

産地から生鮮食品などが委託集荷された後は、卸売市場の価格形成は、それぞれが、その背と肩に多様な需要を背負ったそれらの仲卸業者が、相互に激しい競争を通じて生み出すというシステムなのです。

これが、経済用語で言う「完全競争」であり、価格の吊り上げや、在庫隠しの思惑などの不正や腐敗行為を排除した、卸売市場制度本来の公正性・公平性・公開性の根幹を形作っているのです。

つまり、価格形成と流通の公正・公平は、仲卸業者集団の相互の競争が担っているのであり、「公正取引」と「仲卸必置」は一体不可分なのです。

今回の「改正法」は、「せり原則」を卸売市場の原則から「はずし」、取引方法における「任意の選択肢」の一つに過ぎないものとしています。

これは、卸売市場制度の人為によらない公正な価格形成という最大使命を奪い、同時に「仲卸必置原則」をも奪うことを宣していることです。

これは、少しでも卸売市場制度に関わった者なら自明なことです。

では、従来の卸売市場取引の「原則」のほとんどを廃止した今回の「改正法」ですが、政府は、これを行うことによって、「仲卸必置原則」までもが「廃止されたことになる」ことを知らないでいたのでしょうか。

残念ながら、そうではありません。むしろ、極めて意図的に行われたものであることは、法案審議の際、公述人がこの問題を、強く指摘したにも拘わらず、無視され続けたことでも、既に明白となっているからです。

これは、極めて憂うべき事態と言えるでしょう。

政府は、これからも「仲卸必置原則」はあずかり知らないと言い張るつもりなのでしょうか。

ご承知のように、仲卸業者とは、法制度に基づき公募、審査、営業制限の諸事項に対する誓約と保証金類の支払いなどを経て入場営業を許された「許可業者」のことです。

そして、起業する際もその後も、銀行借り入れその他も含めて資本を投下することで財産を形成し、外部の企業には見られない特別法の制限による営業スタイルを、自らの創意で作り確立して現在に至っています。

法の成立や改正によって、この権利の一部や全部が侵害される事態となったとき、行政がすべきは、本来は事前説明と了解を取るための協議です。

しかし既に述べたように、それは為されませんでした。

それならば、次に政府が取るべきことは何でしょうか。

それは、そのことを隠したまま「改正法」に見合う「業務規程」の見直しを開設者自治体に指示することではありません。

政府・農水省が、地方自治体開設者に指示すべきは、仲卸の「のれん」、「営業権」、そして「財産権」問題に真摯に向き合い、関係法にのっとり、その「補償交渉」を行わせることこそが、真っ先に指示すべきことのはずです。

この問題を、強権的に今後も隠し通し、「改正法」に見合うことばかりを求め続けようとするならば、卸売市場流通の現場と、全国各地の地域住民のための日々の生鮮流通は、大きな混乱を来たします。

そのような強硬な行政は、公正流通を破壊するにとどまらず、全国各地の生産と流通の崩壊へとつながりかねない事態さえ生みかねません。

私達は、政府、開設者に、一刻も早く善後措置の着手に取り組むことを強く要請するものです。

2.業務規程の見直しに対する方針

①私達は、現行の業務規程こそ、地域経済、地域住民に対する公正・公平性を守り、生産者を大手の買い叩きから守る最良の制度と考えます。そのため一切の変更に反対します。

②開設者の地位が民間に解放されることにつながる一切の事柄について私たちは反対します。これは地方自治の自立が、地域経済の自立と自律によってこそ保証されるという普遍の考え方に裏付けられたものであり、市民の税金投与が、本来、それを担保しているものです。

そして、卸売市場は引き続き、地域経済の発展に貢献することを基軸として全国の地域経済と連携をとるというシステムであるべきです。

                            以上。

※1  市場によっては、取扱い規模の大きな小売人などを一定の審査を経て、卸売場に参加させ、仲卸業者と競い合わせることで、卸売場の活性化を更に強める場合があります。これを売買参加人制度と言い、現行法も認めています。

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